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                         − とある日4 −

「うわー……ねぇねぇ、真っ白真っ白」
「……いや、窓全開は寒いって」
「だってほら雪だよ? ワクワクしない? っていうかしろ」
「命令かよ! そもそも朝五時から騒ぐなよ、近所迷惑だろ……っていうか、人の上で暴れるな」
「んーでも、あたしってどっちかって言うと犬だからさ」
「……犬?」
「いーぬはよろこびにわかけまわる〜って。でも、駆け回る庭がないから」
「悪かったな、甲斐性なしで」
「ふふん。甲斐性なしのご主人様は、ペットと遊ぶ義務があるのです。……ちょっとドキドキする響きだね?」
「何言ってんだか。大体、お前は猫だろ?」
「え? そう? これだけ忠実なのに?」
「どの口が言うか。気分屋のマイペースでいつも人の事振り回してるくせに」
「それはほら、飼い主のしつけが悪いから。……かなりドキドキする響きだね?」
「お前、絶対にわざと言ってるだろ」
「とーぜん!」
「そこで胸張られてもなぁ……」
「えー。でも、ドキドキはするでしょ? 女の子の調教だよ? 確かそんなゲーム持ってたよね?」
「おま、ちょ、なんだそれ!?」
「わっ……いきなり起きあがらないでよ! スカートだったらセクハラだよ?」
「そんなことより、お前、いつ物色した!? ああ、いや、それより前に、あれは俺のじゃねぇ!」
「そーなの?」
「あれは借り物だ」
「でも、コンプしてあったよ?」
「ぐっ……いや、あのな? あれは一種のコミュニケーションツールでだな、人間関係を円滑にするためには、趣味が合わないものだってやらなきゃならないわけで。コンプしたのだって、CGの空白とかってすげー気になるっていうか……」
「でも、自力でやったんだよね?」
「う……」
「攻略本、嫌いだもんね?」
「うぐ……」
「ご主人様ぁ〜、とか?」
「リアルすぎる物まねするな! っていうかお前なんでそんな無駄に上手い!?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 高校、演劇部だった」
「き、聞いたことねぇ……って、おい、文芸部って言ってなかったか?」
「うん、兼部」
「……」
「おほほほほ、女は謎があった方が美しいんだよ?」
「相変わらず謎すぎてつかみ所がねぇよ」
「だってほら、飽きられたくないし? これでも色々と考えてるんだよ」
「……お前ってさ、背中から抱きつくの好きだよな?」
「うん。こうすれば逃げられないでしょ?」
「それと、自分で動いてるから安心できる……?」
「……うん。よく分かったね」
「バカ。これでもお前の彼氏だっての」
「そっか……うん」
「心配すんな。逃げたりなんてしないから。大体、これだけ魅力的な女、こっちが逃がさないっての」
「……」
「どうした?」
「え、あ、うん……なんか、改めてそう言われると照れるなって」
「……お前、そこはさらっと流しておけよ。こっちが恥ずかしくなるだろ」
「あ、あはは、ごめん。……でも、すごく、うれしいよ」

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