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                         − とある日3 −

「いただきます」
「いただきまーす」
「…………なぁ」
「ん? なに?」
「何やってんだ?」
「見てわかんない? ピーマン避けてんの」
「そりゃ見れば分かるんだが……なんで俺の方に来てるんだ?」
「だって、捨てるの勿体ないでしょ」
「そりゃそうだが……」
「だったら文句言わない」
「いや、それとこれとは別問題だろ! 大体、お前が頼んだのってチンジャオロースーだろ!? ピーマン無くしてどうすんだよ!」
「しょうがないでしょ、嫌いなんだから」
「だったらなんでチンジャオロースーを……」
「だって、このお肉おいしいんだよ?」
「前に食ったことあるから、それは知ってる」
「だったら問題ないでしょ?」
「…………やっぱりなんか違うと思うんだが?」
「……いつも思うんだけどさぁ。やっぱり細かいこと気にしすぎだよ」
「お前が大ざっぱすぎるだけだろ」
「それがあたしだもん」
「開き直っていいところか、それ」
「いいのいいの」
「まったく……ほんとに適当だよな。今日だって、イベントだったんじゃないのか?」
「あーそうだったんだけどねー雨降ってるから中止」
「……それって、イベントが中止になったわけじゃないよな?」
「当たり前でしょ? 屋外ライブじゃあるまいし」
「……でも、行かなかったと」
「うん」
「雨が降ってたから?」
「そう」
「……確か、知り合いに久しぶりに会うとか言ってなかったっけ?」
「そだね」
「だったら行けよ!」
「ん」
「ん? ……『いやー残念、雨降っちゃったねー。やっぱダルいし、今日は中止で。またチャットでねん』。なんだこりゃ?」
「その知り合いからのメール」
「……類友かよ。つーか、チャットでも話してんのか」
「ん? チャットにメール、メッセに掲示板、文通もしてるし、イベントとかリアルでも時々会うよ?」
「はぁ!? なんだそりゃ!?」
「オタクだったら、TPOでいくらでもネタがなくちゃ駄目だよ」
「ありえねぇって、なんなんだよ、お前……」
「むーそんな引かなくてもいいじゃん。話題豊富な人はモテるんだよ?」
「その割にゃ、俺といるとオタトークしかしないよな?」
「なんか不満そうだなぁ……別にいいよ? ファッションとかの話したって」
「……もっと他にないのかよ」
「時事問題でも熱く語ってみる?」
「それはそれで嫌いじゃないが……お前とやると疲れるから嫌だ」
「後は、ドラマの話なんかもあるかな」
「結局、アニメとかの話と同じになりそうだな」
「学校のことは?」
「ほとんど一緒にいるじゃねーか」
「さて、他に何かある?」
「…………」
「ほら、結局、行き着くのはオタトークでしょ?」
「……なんか納得はいかんが、そこしかないなぁ」
「そゆこと。ごちそうさまでした」
「はやっ!」
「そんなことないよ? そっちが遅いだけ」
「いや、普通に食ってるんだが……」
「あーでも、ほら、量、半分くらいになってたから」
「ああ、それもそ……って、待て、確かお前のって大盛りじゃなかったか!?」
「ん? 気のせい気のせい」
「いや! 確かに大盛りだった! なんでんな早いんだよ!?」
「あーあれかな? 早く新しいゲームがやりたいのかも?」
「…………やっぱりやるのはゲームなのか」
「オタクだしねー。ほら、さっさと食べてよー」
「あーもう分かったよ……」

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