「ねー明日、集合九時だってさ」
「あのな、後ろ乗ってる時にメール見るなっつったろ?」
「だって、緊急の連絡だったらどうするの?」
「それだったら電話が来るだろ。そうなりゃ止まる」
「メアドしか知らない人だったら?」
「その程度の知り合いから、緊急の連絡が来るとは思えん」
「……むー」
「で、九時だったか? ずいぶん早いな」
「うん。ま、色々と準備するんでしょ」
「大したことはしねーだろ。買い出しの大部分は、今日中に終わらせるんだし。第一、新入生が来るのなんて昼頃からなんだろうし、早いことに変わりはないだろ?」
「あ、そういえばそうか。んー、じゃ、騒ぎたいだけだったり」
「そんなとこだろ」
「それにしても、新勧かぁ。もう後輩ができるんだよ? 信じられる?」
「まぁ、あっという間だったなぁ」
「びっくりだよね」
「ついこの間、勧誘されたと思ってたら、もう勧誘する側だからな」
「うん。可愛い子、入ってくるといいね。むしろ、入れる方向?」
「俺は別にどっちでもいい」
「えー、なんでー……はっ、もしかして……ブス専、とか……?」
「アホ。だったらお前と付き合ってるわけないだろ」
「ん? んん? んんん〜? それは、あたしが可愛いって言ってる? 言ってるのかな?」
「わざわざ繰り返すな。…………それ以外に、ないだろ」
「え? 何? 最後、聞こえなかったよー?」
「おまっ、絶対わざとだろ! 顔がニヤけてんぞ!」
「だーって、嬉しいだもーん、何度だって聞きたいよ?」
「何度も言えるか!」
「ちぇーケチー」
「ったく……」
「あーでもさ、ほんとに可愛い子、入ってきて欲しいって思ってないの?」
「えらく突っかかるな。そんなに他の女見て騒いで欲しいのか?」
「んー……まぁ、別に騒いでもいいけど?」
「でも、見るのはお前しか駄目とかってオチだろ?」
「あ、バレた?」
「わからいでか。付き合ってどれくらいになると思ってんだ」
「八ヶ月と二十四日、十二時間」
「……細かいな」
「そう? これでも、分とか秒の計算は省いたんだけど」
「なんでそこまで出せんだよ」
「愛の力♪」
「……」
「……ほんと、こういうの、嫌な顔するよね」
「そういうのは好きじゃない。そういう気持ちが特別な力を発揮するのを否定はしないけどな」
「夢がないなぁ」
「かなり違うと思うんだが……」
「だから、細かいことは気にしちゃ駄目だって。ま、あれだ。さすがに秒は無理だけど、分はほんとに出せるよ?」
「なんで?」
「だって、ちょうど壁の時計が鳴ってたもん」
「……」
「あっ、ひょっとして、緊張でそんなことも分からなかったとか?」
「う、うるさいっ」
「あっ、照れてるー」
「やかましい、ほら、そろそろ降りろ!」
「えーもうちょっといいじゃん」
「駄目だ。これ以上は、バレる」
「ぶー」
「膨れたって駄目だ。パンクしたの放っておくのが悪いんだ」
「そりゃそうだけど……」
「分かったらきりきり歩け」
「はぁーい」